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歴史関連のイラストや漫画、コラムなど。好きな分野は中世英仏、絶対王政、イスラーム、中国王朝。

中世英仏漫画 ししそん 第1章 11-1

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《解説》

・本当の地獄

リチャードとの腐れ縁はあと10年続く。

結局この家族間戦争ではリチャードが勝者として父の領地・立場を引き継いだが、皮肉にもこのことはフィリップにこれまで以上の困難をもたらすことになる。例えば、

(1)プランタジネット家から得られた領地はわずか、

(2)分割統治が進み付け入りやすくなっていたアンジュー帝国が再び一人の所有地に

(3)老境に入り積極性を欠いていたヘンリに対し、リチャードは壮年で戦も強い

などなど。

中世英仏漫画 ししそん 第1章 10-3

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《解説》

・ヘンリの最期

1189年7月、バイヨン会談で親子間の戦には決着がついた。この会見ではヘンリ2世がリチャード・フィリップ側の要求をすべて飲んだほか、互いの陣営に属するメンバーのリストを交換することが取り決められた。

衰弱が激しかったヘンリは担架に載せられてシノン城に移り、リストを読み上げさせた。するとなんと、その筆頭には愛息子ジョンの名が挙がっていた。それに打ちのめされたのもあってか、ヘンリはほどなく亡くなった。

ジョンがいつ兄側についたのかは分からないが、作中のように父の死の床にいたわけではもちろんなく、実際はウィリアム・マーシャルや庶子のジェフリーが彼を看取っている。

ちなみにヘンリ2世の遺体はイングランドではなくフランス・アンジューのフォントヴロー修道院に葬られた。アリエノールとリチャード1世墓所もここ。いつか行きたいな~

中世英仏漫画 ししそん 第1章 10-2

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《解説》

・ヘンリの内心

ここの台詞は、イギリスの史家ギリンガム氏の『リチャード1世』(参(6))を参考にしました。この頃のヘンリ2世は、若ヘンリを後継者と明言したことでトラブルが相次いだので、その二の舞を避けるため後継者をあいまいにしていたらしい。

しかし、実権のなかった若ヘンリと違ってリチャードは軍事力も統治能力も持ち合わせており、父に背いてでも望みをかなえるだけの力を持っていた。その誤算が父子間の戦争を招いたのだそうだ。

また、ヘンリが何度も息子を呼び戻そうとしたのも史実。

・フィリップの内心

フィリップはリチャードを反ヘンリにたきつけるため、父王はジョンを後継者にしようとしてる、と吹き込んでいたようだ。

総ざらい!アンジュー帝国史 その3

【カペー】総ざらい!アンジュー帝国史【プランタジネット

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アンジュー帝国史まとめその3です。手っ取り早く読みたい方は太字だけどうぞ!

前回分はこちらです。

 

akahigerobin.hateblo.jp

その3 葉が落ちるように(1174~1186)

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中世英仏漫画 ししそん 第1章 10-1

第1章は12‐2までなので、そろそろラストスパートです。

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《解説》

・ジェフリー

家にかかわる大事の時には悉くハブられる気の毒な人。一応、ある人物の父親として作品後半でまだ出番はある。言い換えれば下手にちゃんと子を残しているせいで兄や弟や親友に子供を利用され放題の気の毒な人。

・教会

教会は基本的に戦争を好まない。また、この時は第三回十字軍前夜で聖地情勢がひっ迫していたので、とっとと内紛を終わらせて十字軍に出発してほしいというのが本音。

教会のとりなしに対し、フィリップは「どーせヘンリ王から賄賂貰ってんだろ」と一蹴した。

ル・マンの戦い

上でリチャードに対峙しているのは騎士ウィリアム・マーシャル。彼は逃走するヘンリ軍のしんがりを務めリチャードと交戦し、落馬させた。この時あわや決着というところを、「丸腰だからとどめはさすな!」とリチャードが制止。ウィリアムもこれを受け入れ彼を逃がした。

中世英仏漫画 ししそん 第1章 9-2

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《解説》

・臣従礼

ボンムーランの会見ではリチャードがフィリップに対して臣従礼を行い、これがこの会見の要点。

リチャードはノルマンディー、アンジュー、ポワトゥー(アキテーヌ北部)などの領主としてフィリップに臣従を誓う。このことはつまり、ヘンリ2世の領主権の否定=父への反逆だった。

なお臣従礼の儀式は、家臣が両手を差し出してひざまずき、主君がそれを包み込むというもの(下図参照)。ちょっと絵的にシュールになるので省いてしまいました。

なお臣従礼はフランス語ではオマージュ。我々が日々使うオマージュの語源である。

en.wikipedia.org

・愛のネクストステージ

この回参照。

akahigerobin.hateblo.jp

・1188年のクリスマス

参考文献に上げたペルヌー氏の『リチャード獅子心王』では、リチャードはこの年パリで、フィリップとともにクリスマスを過ごしたと書いている。

ギリンガム氏らほかの著作ではリチャードの所在ははっきりしないが、少なくともヘンリのクリスマス宮廷に出席した王族はジョンのみで、リチャード・フィリップ陣営に身を投じた諸侯も欠席、わびしい宮廷になったようだ。

中世英仏漫画 ししそん 第1章 9-1

登場人物ごとにソートできるよう、人名カテゴリを作ってみました。

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《解説》

・ボンムーラン会談

これまでフランス王・ノルマンディー公はジゾールの大ニレで会見していたが、前回の会見で切り倒されてしまったため、今回は場所を改めた。

・姉上

フィリップの異母姉・アリスのこと。彼女は1169年にリチャードと婚約した。なぜずっと婚約者だったかはこちらで書いてるので参考までに。

akahigerobin.hateblo.jp

・ちなみに

お気づきだと思いますが、フィリップはプランタジネット一族のことをフランス語名で呼んでます(ヘンリ→アンリ、リチャード→リシャールなど)。

この漫画は名目上英仏漫画ですがプランタジネット家はフランス貴族だしアイデンティティもフランス人。

高校世界史で習うみたいにイングランド王がフランスに領地を所有していた」んじゃなくて正確には「フランス貴族がイングランド王国を所有していた」んだ!とこっそり主張したくて上のような呼び方をさせています。これだから歴史オタクはめんどくさいんですよ。