中世英仏漫画”ししそん” 第2章 3-3
またもやお久しぶりです(;´・ω・) しばらくやってたゲームが倦怠期入って来たんで、こっちの更新も進めていければな~と思います。
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《解説》
・フィリップの旗
両王間の取り決めとして、遠征先で得たものは二人で等分するというものがあった。リチャードの軍がスタンドプレーでメッシーナを占領した後、フィリップが仏王旗の掲揚を求めたのは事実。
・ジョアンナ
リチャードの末の妹。シチリア王グリエルモ2世に嫁いでいたが、王の死後従兄弟のタンクレドが王位を武力で奪取したため、幽閉され人質となっていた。
フィリップが一目ぼれしたのも本当。ジョアンナは娘の中で一番アリエノールに似ていたとか言われてるのになぜだ…まぁルイ7世もアリエノールを愛してはいたようだしな。
中世英仏漫画”ししそん” 第2章 3-2
お久しぶりです、2か月ぶりになりましたがまだ生きてますよ!!中華箱庭ゲームの二次創作と掛け持ち中で清書に欠けられる時間が減ってしまっていますが、こちらもぼちぼち更新していきます。
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《解説》
・フィリップの船出
ええと、ギャグみたいですが実話です。しかもリチャードと会見してムカついてさっさと出発を決めたというのにこの有様…面白いけど可哀想。その結果が半年間リチャードとシチリアに缶詰めとか、もう本当に可哀想。面白いけど。
・マサクゥル
絶対誰にも通じない自信のあるスターダストなクルセイダースネタ。だってクルセイダースで3で敵(とか言ったらよくないな、歴史物だし)の本拠地がエジプトで、なんか色々親和性があると思うのですよ。…え、何言ってるか分からない?本当に申し訳ありません。
・貴様の軍が原因なのだぞ
シチリアの住民からしてみれば、異国の軍隊が長期間滞在するのは面白くない。フィリップは手勢が小規模ということもあって大人しくしていたが、リチャードとアンジュー帝国軍ときたら農民のハヤブサを勝手に取り上げたうえ抵抗されたら峰打ちで相手を死に至らしめたり、住民をからかったり街の近くに砦を作って威圧したりと中々の狼藉を働き、ヘイトが溜まるあまり物も売ってもらえないレベルだったらしい。結局パンを売る女性に対する傷害事件からメッシーナでは大規模な暴動がおこることになった。
リチャード・フィリップとシチリア王タンクレドは対応を協議したが、結局リチャードが途中で抜けてスタンドプレーでメッシーナの町を制圧してしまった。
これ、決断の速いリチャードを賞賛する向きもあるんですけど、個人的にはモヤモヤするんだよなぁ…。
中世英仏漫画”ししそん” 第2章 3-1
※この章では聖地にはたどり着きません。
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《解説》
・リチャード・フィリップのあゆみ
上で書いている通り、両王はフランスのヴェズレー(※)で一度合流し、出発の儀礼を挙行。その後それぞれの道をたどりシチリア(次の合流地)を目指した。出航はフィリップがジェノヴァ(彼はジェノヴァ商人に輸送を委託していた)、リチャードがマルセイユから。
(※)ヴェズレーはマグダラのマリアの聖地で、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼の出発地、ルイ7世とアリエノールが参加した第2回十字軍の出発地など巡礼と縁の深い土地である。
・リチャードの寄り道道中
ジェノヴァからシチリアに直行したフィリップに対して、リチャードはイタリア各地で寄港しながらゆっくり行軍している(※)。寄港地では風の都合等で何日か滞在することもあり、オスティア・アンティカ(ローマの都市遺跡)を見学したり、ナポリの修道院を見学したり、ヴェズヴィオ火山でハイキングしたり……わあ、とってもたのしそうですね!
(※)リチャードが船酔いしたからとも言われるし、到着が遅れている船団との合流を待っていたのかもしれない。
・軽石
リチャードがヴェズヴィオ火山でスコリアを拾ってきたのは本当。(リチャードはヴェズヴィオ山に登ってみたかったらしく、わざわざこの辺で長期滞在したそうだ)
中世英仏漫画”ししそん” 第2章 2-2
バルバロッサの行く手には壮大なオチが待っている。
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《解説》
・リチャード・フィリップの協議
十字軍に備え、二人は12月30日から1月13日にかけて話し合いをした。ここでの取り決めは以下の通り。
(1)王はすべての十字軍参加者の財産を守ること。
(2)両王は互いに信頼しあうこと。
(3)留守中に本拠地が攻撃されたら互いに同盟すること。
★リチャードはルーアン(ノルマンディー公国の都)、フィリップはパリ。
(4)諸侯たちは王に忠誠をつくし、休戦すること。
★休戦に違反したら教会により破門されることになっていた。
(5)両王のどちらかが遠征中に亡くなったら、生き残った方が軍勢と資金を引き継ぐ
こと。
(6)集合は6月24日(洗礼者ヨハネの祝日)、ヴェズレーにて。
これらの内容が、玉璽を押した正式な文書として作成された。
……うん、(2)の時点で無理だなこれは……
ちなみに作中だと主にフィリップの方に非があるように描いているけど、リチャードもケンカ売るような事ばっかしていて大概である。
・シュヴァーベン公フリードリヒ
バルバロッサの三男で、父に従って十字軍遠征に参加した。1166年生まれなのでフィリップより1歳年下。バルバロッサ(1122年生まれ)は初婚で子供が生まれなかったので、息子たちとは結構年が離れている。
リチャード1世とエクスカリバー考
「(リチャード1世は)自分の剣をエクスカリバーと呼んでいた」
日本語版wikipediaの「リチャード1世」の項目にはこんなことが書いてある。
さりげなくも非常なインパクトがある一文であり、私自身も初めてこれを読んだ日には中二病とか僕のエクスカリバー(※)とか散々ネタにしたものだった。
さらに近年、Fateシリーズが彼を元にしたキャラクターに上記の設定を採用し、「リチャードの剣はエクスカリバー」という認識はますます人口に膾炙するようになったと思われる。
……しかしである。
漫画を描くうえで伝記は5冊、webページも色々参考にさせていただいたが、そんな話は日本語版wikipedia以外で見たことがないのである。
おらおらソースを出せソースを!
いや、煽りとかではなく純粋に気になるし、あるなら教えてほしいのである。
というわけで、リチャード1世とエクスカリバー及びアーサー王伝説の関係について、また「リチャードが自分の剣をエクスカリバーと呼んでいた」説の真偽について、自分なりに調べて整理してみた。
少々長くなるが、お付き合いいただきたい。
(※)何年前だったか、web広告でよく見かけたBL漫画のセリフ。よりにもよってリチャードには男色家の風聞がある。
《0.結論から言うと》
そんな事実はない。
もっと適切にいうと、「根拠はゼロではないが、正確ではない」という感じ。
リチャード1世が一時エクスカリバーと呼ばれる剣を所持していたことは確かである。ただしそれは彼が名付けたわけではなく、戦闘で自分の剣として使った記録もない。
以下、具体的に見ていこう。
続きを読む中世英仏漫画”ししそん” 第2章 2-1
リチャードの武装を描くのが大変めんどくさいのですが、恐ろしいことにこの先ほとんどこれなんだよな……。鎖帷子ブラシとかほしい。
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《解説》
・十字軍なんて
ジョンは騎士道や文学には余り縁がない育ち方をしてきたので、兄たちに比べて冷めていたんじゃないかなぁと想像(戦争も下手だし)。
ちなみにジョンの十字軍参加について。以前も書いたように、1187年、リチャードは十字軍への参加を決めた。しかし当時は後継者問題をめぐって父ヘンリ2世と揉めている最中。リチャードは自分の不在中、父がジョンを後継者にしてしまうのを恐れ、ジョンもともに十字軍に参加するよう求めたのである。
なおリチャードに代替わり後、ジョンは兄の後継者になったので、十字軍に参加する必要はなくなった。
・リチャードとイングランド
「プランタジネット朝のイングランド王」と紹介されがちなヘンリ2世やリチャード1世だが、何度も強調してきたように、彼らはフランスの領地に帰属意識を持つ「フランス貴族」である。
リチャードのイングランドに対する認識もあくまで「豊かな財源」というくらいのものだったようで(参考文献(12))、「買い手がいれば、ロンドンを売ってもいい」と言ったのも史実である。彼は十字軍の財源捻出のため土地や官職などあらゆるものを売りまくった。
それにしてもリチャード1世って、イングランドには10年の治世で4か月しか滞在してないし愛着もないし英語も話せないし戦争や築城のため重税かけまくったりロンドンまで売ろうとしたくせに現地では人気者なんだよな。戦争強けりゃ全部チャラになるのか……(なおジョン)。
中世英仏漫画”ししそん” 第2章 1-3
大変お久しぶりでございます。
色々立て込んでいて放置してましたが、ようやく落ち着いたので、更新再開していきます。他の世界史系コンテンツもぼちぼち始めていきたいところ…
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《解説》
・皇帝
中世ヨーロッパ、というかヨーロッパ史上の皇帝について少々解説。
そもそも「皇帝」とは「ローマ皇帝」のことである。395年、ローマ帝国は東西に分裂したが、東ローマ帝国はビザンツ帝国として存続、476年に滅亡した西ローマ帝国の帝冠はフランク王国のカール大帝を経て神聖ローマ帝国に受け継がれた。
では何故ローマ皇帝の存続にこだわるのかといえば、ローマ帝国の在り方がヨーロッパの「理想の姿」「本来あるべき姿」とされたからである。(参考文献(4))
神聖ローマ帝国の版図は現在のドイツにあたる。それだけでも大国に思えるが、「ローマ皇帝」の領土としてはちっぽけに過ぎる。皇帝の権威は本来全世界に及ぶべきもの。それを実現させるため、皇帝は西欧各地に干渉していくのである。
ちなみに19世紀になるとナポレオンがフランス皇帝となり、「第三の皇帝」が登場した。上述の理由で本来なら皇帝は2人しかありえないため、これは革新的なことだった。中世・近世から近代への、時代の変化を象徴する出来事と言える。
・フリードリヒ・バルバロッサ(フリードリヒ1世)
赤髭(伊語バルバロッサ)がチャームポイントの神聖ローマ皇帝。「皇帝による世界支配」という理念を愚直に実現させるべく、イタリア侵攻や教皇との対決など積極的な政策を進めた。
ちなみに「神聖ローマ帝国」の国名に「神聖」を冠したのは彼であり、「教皇に聖別されなくてもうちは元々神聖だぜ!」と教皇の干渉を否定する狙いがあった。十字軍に勇んで参加したのも、「神聖帝国の主」としての自負があったものと思われる。
個人的には、リチャード以上のロマンチストだと思う。十字軍遠征でもお目目キラキラな大物っぷりをいかんなく発揮しているので請うご期待。