総ざらい!アンジュー帝国史 その4
中世英仏漫画”ししそん” 第2章 1-2
時は1187~88、リチャード・フィリップはv.s.ヘンリで共闘中です。
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《解説》
・一石二鳥
実際、フランスからの十字軍には国王フィリップの他にフランドル伯、シャンパーニュ伯、ブルゴーニュ公等並み居る大諸侯が参加した。しかもほとんど現地で没したため、王権が拡大する一助となった。
・40年前
1144年、ルイ7世と当時フランス王妃だったアリエノールが第2回十字軍に出立した。この遠征が両者の決裂を招いたことも、こちらで書いてるので参考までに。
・ヘンリ・フィリップと十字軍
1188年、ティルス大司教はヘンリ・フィリップ両王の前で聖地の支援と十字軍への参加を訴えた。
ヘンリは統治が生き甲斐みたいな人なので、十字軍遠征で領地を離れるつもりは毛頭なく、代わりに経済的支援を行った。
一方のフィリップはどうかと言えば、一般的なイメージとは異なり、十字軍への参加自体には積極的だった。カペー朝は教会の守護者と振る舞うことで権威を高めていたためだ。とはいえ男子不足のカペー家のこと、戦死の危険もありうる十字軍遠征には後継者問題がつきまとう。結局1187年に王子ルイが誕生し、フィリップもようやく十字軍参加の決断が出来るようになった。
というわけで、ヘンリはともかくフィリップは作中のように嫌々参加表明したわけではなかったりする。
中世英仏漫画”ししそん” 第2章 1-1
ちょっと世界が広がる第2章、十字軍の道行き編。1章以上にグダグダです。
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《解説》
ご存じ三宗教の聖地。ユダヤ教徒にとってはヤハウェ神殿があった場所、キリスト教徒にとってはイエス・キリストの磔刑・復活の地、イスラーム教徒にとってはムハンマドの昇天場所、とそれぞれのアイデンティティに関わるとても大切な場所である。
イェルサレムは正統カリフ時代の638年からイスラーム勢力の領内に組み込まれ、1099年に第1回十字軍が占領、イェルサレム王国を建国した。その後聖地ではムスリム勢力とイェルサレム王国の攻防が続いたが、形勢に変化をもたらしたのがサラディンの登場である。
1171年にアイユーブ朝を建てたサラディンは十字軍側に攻勢をかけ、1187年にハッティーンの戦いでイェルサレム王国軍を破ったことを皮切りに、海岸沿いの諸都市を落とし、ついには10月にイェルサレムを占領した。
・サラディンの旗印
サラディンは黄色い地に鷲の紋章をあしらった旗を用いていた。この「サラディンの鷲」はいまでもエジプトの国旗や国章に用いられている。
・ティルスとモンフェラート侯
モンフェラート侯は北イタリアの貴族でイェルサレム王家の姻戚。武勇に優れ、ティルスの守将としてサラディンの攻勢を退けた。彼の活躍もあって、ティルスとそれより北のトリポリ、アンティオキアはムスリム軍から独立を保った。この辺の詳しい事情は3章にて。
・リチャードの参加表明
本当に誰よりも早く、なんなら教皇が正式な勅書を発布する前にもう参加表明をしていた。単に中二病もとい宗教的情熱にかられただけではなく、十字軍参加を渋る父・ヘンリに対抗し支持者を得るための作戦でもあった。
【漫画】第2章表紙
中世英仏漫画 「ししそん Lion contre Auguste」 第2章表紙
本当はちゃんと塗りたいんですけど、先に進めるの優先でべた塗りonlyです。中世ヨーロッパの武装は鎖帷子がメインなので大変めんどくさい……
《歴史背景》
イスラーム世界の統一を目指すアイユーブ朝のスルタン・サラディンは聖地(地中海東岸)に攻勢をかけ、1187年10月には第一回十字軍が占領したイェルサレムをムスリム勢力のもとに奪還。
聖都イェルサレム陥落のニュースは西欧においては非常な衝撃を持って迎えられ、当時の教皇がショック死するほどであった。
ムスリム勢力からの独立を保っていたティルスの大司教は西欧各地を巡って救援を呼びかけ、神聖ローマ帝国(ドイツ)のフリードリヒ1世バルバロッサ、フランスのフィリップ2世、イングランドのリチャード1世の三大君主らを含む「第三回十字軍」がイェルサレムの奪還目指して旅立つのだった。
《登場人物》
リチャード
ご存じししの方。王になってお騒がせ度もUP。十字軍で聖墳墓教会を目指すつもりが人生の墓場に投げ込まれる。
フィリップ
お馴染みそんの方。相変らずリチャードに振り回されてストレスがたまる日々。惚れっぽいが結婚適正は限りなく低い。
フリードリヒ・バルバロッサ
皇帝たるもの、夢はでっかく世界制覇!その足掛かりにイタリアを踏み荒らし、今度は十字軍に乗り出すぞ!?
ジョアンナ
リチャードの妹で60オーバーではないヒロイン。恋愛絡みのイベントが豊富だが碌な相手がいない苦労性プリンセス。
アリエノール・ダキテーヌ
60オーバーのヒロイン。ゆりかごから墓場まで、息子のため愛の鞭をふるう。
ピレネーを超えてやって来た刺客もといナバラ王女。リチャードに愛のポエムをもらったようだが……?
ギヨーム・デ・バール
フィリップの片腕兼フランス軍最強の騎士。いかにもなステータスなため何かとリチャードに敵視されている。
中世英仏漫画 ししそん 第1章 12-2
第一章、プランタジネットお家騒動編・完!次回からはしばらく十字軍です。
ジョンがあまり出てこなくなって寂しい。
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《解説》
・久々のガキップ
繰り返すがフィリップ2世は実際自己中なクソガキだったらしい。まあ大人になっても……
・イエス&ノーな男
気まぐれですぐ意見を変えるというので、吟遊詩人ベルトラン・ド・ボルンがリチャード1世につけたあだ名(Yea and Nay)。
中世英仏漫画 ししそん 第1章 12-1
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《解説》
・知的営み
ジョンは読書好きで、移動の際にはつねに本を携帯していたり、ウィンザー城所蔵の本を読破したりの逸話が伝わっている。(世界史的な)有名どころだとプリニウスの『博物誌』とか、アウグスティヌスの『神の国』等を読んでいたようだ。騎士道物語や詩ではなく実用・哲学書系が多いのが彼らしい。
・人生最大の汚点
人好きのする性格で戦争バカ強のリチャードの後だから余計嫌われる羽目になったという意味でも、戦による財政難・国力疲弊を押し付けられたという意味でも。
中世英仏漫画 ししそん 第1章 11-2
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《解説》
・あの腹黒は……
ペルヌー氏の『王妃アリエノール・ダキテーヌ』によれば、アリエノールはフィリップを警戒し、彼には気を付けるようリチャードに忠告していたらしい。
・二人の会見
実際はそこまで一方的なものではなく、リチャードはアリスとの結婚を(少なくとも表向きは)認め、フィリップは4000マルクの見返りとして、プランタジネット家から奪った城をいくつか返還した。